大判例

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静岡地方裁判所 昭和35年(ケ)63号 決定

本件記録によれば、競買人は本件不動産に対する昭和三十五年九月二十九日の競売期日において、最高価金二万七千円の競買の申出をなしたことが明らかであるところ、当裁判所の堀住隼雄審尋の結果によれば、右競売期日に於て同人は本件不動産につき競買に参加したものであるところ、その競売手続が開始されるに先立つて最高価競買人から、金員を交付すれば競買を妨害しないという様な趣旨で三人分の日当を出せば手を引くという申出を受けたがこれを拒絶して競買に参加し、最高価競買人と交互に高価の申出をして最高価金二万七千円になつたところ、これ以上の高価の申出を制止するような言葉で、もういいじやないかといわれたため、それ以上の競買申出を取りやめ、同額で競売手続が終了したところ更に競売場を退出しようとする処で、一ケ月位して手続が済んだら書類をもつてお宅に伺うからと暗に後日競落物件を同人に売り渡すかのような申出を受けた事実を認めることができる。

右の事実によると、最高価競買人は、明らかに本件競売手続において競買参加人堀住の自由な意思に基く競買申出を妨害するような行為をして競売手続の公正を害したのみならず、競売終了直後に競落不動産の転売を予測させるような言動をして競落代金を納付する真意の存在をすら疑わしめるような行為をしたものというべきである。

しかして、最高価競買人が従前から単独あるいは金義述、岩倉正雄の三名と共同して屡々当裁判所競売場に出入し、不動産その他の競売手続に参加し、目的物の価格の公正を害し、あるいは不当の利益をむさぼるかのような行為をなし、一般競買人の自由な意思に基いてする競買参加を妨害し、ために世人をして競売手続全般にわたりその公正につき疑念を懐かしめる虞れすらある状況にあることは当裁判所の職務上顕著なところである。

およそ競売手続は、目的不動産を適正に換価するため一般多数競買人が自由な意思をもつて競買に参加して競買申出をなすことがその制度上本質的なものであつて、これが競買につきその公正を害するような行為が介在したときは、たとえ形式的には最高価競買の申出によつて最高価競買人たる地位を取得したとしても、かかる競売手続によつてなされた競買はすべて無効のものとなり、その者は競落人たるべき資格能力を有しないものとして民事訴訟法第六百七十二条第二号に該当するものと解すべく、従つてこの者を競落人として競落を許すべき余地は毫も存しないものというべきである。

本件についてこれをみるのに、最高価競買人が本件競売手続の公正を害する行為をなし、その公正が害されたことは前示のとおりであるから、本件はまさに競売法第三十二条によつて準用される民事訴訟法第六百七十二条第二号に該当するものというべく、その競落を許すことはできないものであるから、結局債務者の異議は理由があるので本件競落を許可しない。

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